鹿島踊りを奉納する保存会の小中学生ら=多賀神社

 熱海市内の夏祭りの最後を飾る上多賀の多賀神社(雨宮盛克宮司、井沢一頼総代長)の例大祭が29日、行われた。神事に続き、境内で市指定無形民俗文化財の鹿島踊りが奉納され、多賀神社鹿島踊保存会(椎野敏郎会長)の会員たちが繰り広げる勇壮な踊りが住民らの注目を集めた。

 伝統を受け継ぐ同保存会は、小学校低学年から70代まで約50人が所属。約1カ月にわたり稽古に励み、例大祭を迎えた。境内では小中学生を中心とした会員約30人が幣束やひしゃくなどを手に踊り、稽古の成果を堂々と披露した。会員の一人、椎野航吉君(多賀中3年)は、永年奉仕者として同神社表彰を受けた。

 鹿島踊り奉納後は御神幸行列があり、厄年を控えた男性が担ぐ「厄年神輿(みこし)」が地区内を巡行し、宮神輿保存会「青魁會(せいれいかい)」も続いて祭りを盛り上げた。

 【写説】鹿島踊りを奉納する保存会の小中学生ら=多賀神社

 ■「草刈役」雲野さん引退 宵祭りにカヤ用意 長年奉仕に感謝状 「一人きりで緊張感」 

 熱海市上多賀の多賀神社例大祭で長年「草刈役」を務めてきた雲野武伸さん(72)が今年で引退する。本祭りの御神幸行列の際、御仮屋で神輿(みこし)の下に敷くカヤを、宵祭りの夜に山中で刈って用意する役目で、100年以上にわたって先祖代々、受け継いできた。雲野さんは「長い歴史の中で少しの時間、奉仕させていただいたことに感謝している」と静かに語った。

 同神社の総代によると、戸又の海辺に流れ着いた神様に「鈴木」という者が草を敷いて休んでもらい、その後神様が上多賀の地に鎮座した―とされ、祭りでは御仮屋に草を敷く習わしになっている。草を刈る役目は鈴木家が代々務めたが、百数十年前に雲野さんの先祖が引き継ぎ、以来奉仕を続けてきた。

 雲野さん自身、子どもの頃から父親と一緒に山に入り、しきたりを覚えた。夜中、誰にも見られないように山に入るのが習わしで「山の中、一人きりの作業で、緊張感があった」と振り返る。

 例大祭の前に草刈り場の状況を確認するなど、役目に心を配った。年を重ね、運転に不安を覚えるようになった。「与えられた使命だと思ってやってきたが、いつまでも続けられるものではない。区切りを付けなければと思った」。退役を決断した。

 最後の役目を終えた29日、雲野さんは雨宮盛克宮司、井沢一頼総代長連名の感謝状を受けた。草刈役は来年以降、神社総代が務める。雲野さんは「将来を見据えて、どのようにしていくのか決めてもらえたらいい」と話した。

 【写説】感謝状を手にする雲野さん=上多賀の多賀神社