その美術館の代名詞ともなっている江戸時代の屏[びょう]風[ぶ]は、柔らかい光の中に静かにたたずんでいた。見る者とを隔てるものなど何もなく、手を伸ばせば触れるかのよう。圧倒的なリアリティーで迫って来た

 ▼熱海市のMOA美術館が先日、リニューアルオープンした。何が変わったのか。興味津々で見学したが、個人的に最も注目したのが尾形光琳筆の国宝「紅白梅図屏風」だ。展示ケースにはガラス板が“あるはず”なのだが、近づいても存在すら感じない。特殊なガラスと黒漆[しっ]喰[くい]の壁、最先端の光学技術で映り込みを防ぐ

 ▼屏風の台も凝っていた。屋久杉の板で免震機能付き。イグサはガスが発生することから紙製の畳を敷いてあるという。同じく国宝の野々村仁清作「色絵藤花文茶壺[つぼ]」の専用展示室なども、さまざまな工夫が施されている

 ▼内覧会で内田篤呉館長は「町づくりの拠点となるような、21世紀型の美術館を目指した」。さらに展示室について「美術品が美しく見える空間になった」と胸を張った

 ▼観光施設には2種類ある。その町に来た人が「ついで」に訪れる施設と、町を訪れる「目的」となる施設。同美術館は後者として、熱海市や近隣市町の観光振興への貢献が期待される。