「きょうは遅いね」「〇〇さん、最近見掛けないね」。伊東市内の共同浴場で、よく耳にした会話である。地域の人たちが多く利用し、時間帯ごとに“常連さん”もいる。汗を流すだけでなく、市民の「憩いの場」になっている

 ▼「伊豆伊東ガイド」(伊東観光協会企画・製作)によると、同市内には湯川、松原、玖須美、岡、鎌田、新井に九つの共同浴場がある。昔は自宅に風呂がある家が少なく、共同浴場に行くのが一般的だった。筆者も最近はご無沙汰しているものの、子ども時代は毎日のように通っていた

 ▼はしゃぎ過ぎて怒られることもあった。時には煩わしいと思いながらも大人の話に耳を傾け、上下関係や地域のさまざまなことを教わった。“裸の付き合い”が人と人とのつながりを深め、地域内の連携を強化した

 ▼みんなが顔見知りになり、行き交う道であいさつをすることで、防犯にも大いに役立っていると思っている。一方で、今は自宅に風呂があるのが当たり前であり、共同浴場も施設の老朽化などの問題が出てきている

 ▼全国有数の湯量を誇る伊東で、3世代が交流できる共同浴場は素晴らしい“温泉文化”といえる。失われることなく、しっかりと継承されていくべきだ。