作家の太宰治をしのぶ「桜桃忌」が先月19日、熱海市昭和町の文化・観光施設「起雲閣」で行われ、来館者は短編小説「桜桃」の朗読に耳を傾けた。会場はかつて太宰が宿泊した和館2階の部屋「大[たい]鳳[ほう]」。ファンは至福の時を過ごしただろう

 ▼太宰は、自らの映画観を語ったエッセー「弱者の糧」で、「映画を好む人には弱虫が多い」と書き出している。真っ暗な映画館の片隅に座っている時間は世間と離れているため「あんな、いいところは無い」とつづった

 ▼下田出身の映画監督御法川修さんも、映画館でスクリーンに向き合う時間に魅せられ、その道を志した。先月、御法川監督が手掛けたWOWOWの連続ドラマW「宮沢賢治の食卓」(全5話)が始まり無料配信された第1話を見た

 ▼3年越しの企画で、宮沢が愛した食べ物やクラシック音楽を通して、若かりし日々の人物像を解き明かしていく。主人公の賢治を演じるのは鈴木亮平さん。純粋な信念を抱く新たな賢治像などが展開され、引きつけられた

 ▼御法川監督は「“お茶の間”という言葉が死語になった時代に、家族団らんのど真ん中で見てほしい」とコメントしている。残念ながら第2話以降を見ていない。DVD化してほしい。