伊東市八幡野、伊豆高原桜並木沿いに住む鍋迫泰子さん(70)が、自宅駐車場の一角にウッドデッキを作り、無料で開放する−という記事が、31日付の伊豆新聞伊東版にあった。桜の季節ならずとも、坂道を歩く観光客らにとってこの上ないもてなしだ

 ▼観光地にとって「もてなしの心」が大切なのは言うまでもない。「ホスピタリティー」とも言われるが、若いころ、その神髄に触れる講演を取材したことがある

 ▼1984(昭和59)年4月25日、旧伊豆長岡町(現伊豆の国市)で行われた同町商工会50周年記念「地域づくりシンポジウム」だった。講師の一人は大分県・由布院温泉旅館組合長(当時)の溝口薫平さんで、同温泉のにぎわいを創出した人物として知られる。現在は観光庁認定の「観光カリスマ」だ

 ▼「まず不統一だった道路沿いの旅館の看板をなくした。観光客が旅館の場所を尋ねたら、住民誰もが案内できるようにした」。溝口さんは町づくりの一端をこう話したと記憶している。もてなしは住民との自然な触れ合いの中にある−と言っているようで印象深かった

 ▼「坂が急で休める場所があったら」と、自分が思ったことを形にした鍋迫さんの行為も、まさに「もてなしの心」だ。