以前は昭和33(1958)年生まれだと話すと「狩野川台風の年ですね」と言われ、話が弾んだ。同年は東京タワーの完成、1万円札の登場、長嶋茂雄さんの読売巨人軍入団、皇太子妃に正田美智子さん(現皇后陛下)内定−など大きなニュースが多かったが、同台風の記憶があまりにも強かったからだ

 ▼同台風は同年9月26日午後9時すぎに伊豆半島南端をかすめ、27日午前0時ごろ三浦半島に上陸した。大雨により狩野川など伊豆の多くの河川が氾濫、流域をのみ込み大きな被害が出て、死者・行方不明者は1269人(県外含む)に達した

 ▼先日、伊東市史編さん委員加藤清志さんの寄稿「思い起こせ狩野川台風の大災害」を伊東版に上下で掲載した。被害が大きかった伊豆市では記憶を後世に引き継ぐ活動が盛んだが、58人が犠牲になった伊東市では慰霊祭もなく「忘れようとしているように感じる」と寄せた

 ▼今、同市では奥野ダムが出来、安心感があるが、加藤さんは「死傷者を多く出したのは松川の本流ではなく、支流の小川沢や宇佐美の小河川その他だった」と警鐘を鳴らす

 ▼台風の惨禍からあすで59年、犠牲者の遺族にとっては六十回忌に当たる。改めて防災への思いを強くした。