山梨県小淵沢のアウトレットモールの中庭に大きな木があり、根元に実がたくさん落ちていた。栗に似ているがもっと丸っこくておしりの模様も違う。いくつか拾って帰った。5年ほど前のことだ。Tシャツのセールをやっていたのを覚えているので、夏の終わりだったか

 ▼それからしばらくして、伊東市のさくらの里で開かれたクラフトの森フェスティバルの伊東自然歴史案内人会のブースで同じ実を見つけた。尋ねたら栃の実だと教えてくれた

 ▼先日、岐阜県の下呂温泉を旅行してきた社の先輩から「栃の実せんべい」を土産にもらった。箱の中のしおりに、拾ったものと同じ木の実の写真が載っていた

 ▼いったいどうやって作るのか、販売元「尾張屋製菓」のホームページを見てみた。〈果肉を取り灰をまぶしてあくを抜き水洗い。それを天日でカラカラになるまで干し、殻を割って実を取り出す〉…。ずいぶんと手間がかかるものだ。〈秘伝のあく抜きでかすかな苦みを残した素朴な味〉とアピールしていた

 ▼最初に栃の実を食べた人がいて、あく抜きの方法を編み出した人がいて、それを使ったせんべいを名物にまで仕上げた人がいる。せんべいを食べながら、先人の偉大さに思いをはせた。