先日、テレビ番組に不思議な人が出た。断崖絶壁を愛でる“がけじょ”を自称する女性で、崖の魅力をとうとうと述べ、下田市や、南伊豆町の海岸を紹介していた。

 ふと思い出したのが幸田文の随筆「崩れ」だ。下賀茂温泉と縁の深い幸田露伴の娘である文は70歳を過ぎて突如、崩壊地に魅せられた。安倍川上流の大谷崩れ、富士山の大沢崩れ、立山カルデラなどを巡った。足腰の衰えた文は、ときに負ぶられながら深山に分け入り随筆を書き上げた。

 一般的な崖と崩壊地の違いはあるが“がけじょ”の元祖かもしれない。文は露伴と共に昭和初期、下賀茂を訪れている。今はジオサイトの伊豆の海岸線を、若い日の彼女は見たのだろうか。(航)