箱を折る男性の話を聞いた。多くの障害者が働くカフェ&ベーカリーを全国展開する「スワン」の元代表海津歩さんが、伊東市内で開かれた集まりで話してくれた

 ▼男性は入社後、商品を入れる箱を折る仕事を担当することになった。ベテランのジョブトレーナーが手順を丁寧に説明するのだが、全く手を動かさない。毎日毎日、じっと座っているだけだった

 ▼1カ月、2カ月と過ぎても変わらない。「これは無理でしょう」とトレーナーもさじを投げた。でも海津さんは待ち続けた。そして3カ月と3日たったある日、男性が突然、ものすごいスピードで箱を折り始めた。その姿を見て、トレーナーは泣き崩れた

 ▼「誰かが脇にずっといたことが、何かを引き起こしたのではないか」と海津さん。その体験から徹底的に寄り添うことの大切さに気付かされたという。男性は、社にとってなくてはならない存在になった

 ▼来年は戌[いぬ]年。犬は古くから人間と共に暮らしてきた。猟犬や番犬として働きもするが、これだけ長い間愛され続けた一番の理由は、常に飼い主に寄り添っていてくれたことだったのではないか。誰かが、何かが、いつも横にいてくれるという安心感は大きな力になる。時に奇跡を起こす。