もう20年以上前、水戸市を訪れた際、老舗料理店で「水戸黄門御膳」と銘打った料理を食べたことがある。水戸黄門こと水戸藩第2代藩主・徳川光圀が食べていた料理を再現した懐石料理だった

 ▼どんな内容だったか。サケの塩焼き、牛乳豆腐、牛肉やチーズの料理があったと記憶している。江戸時代とは思えない献立だ。「生類憐れみの令」の頃、光圀はこの他、豚・羊肉、ラーメンも日本で初めて食べたという(異説あり)

 ▼光圀といえば諸国を漫遊し世直しする時代劇で有名だが、伊豆にも領民から「世直し大明神」とたたえられた人物がいた。幕末の韮山代官・江川太郎左衛門英龍(坦庵)。世界文化遺産の韮山反射炉や品川台場を造ったが、人柄はあまり知られていない

 ▼伊豆の国市在住の女優大塚良重さんが先日、反射炉ガイダンスセンターで「坦庵公伝」ひとり語りを行った。「質実剛健」「自分に厳しく領民の幸せを考えていた」という人物像を、実妹「とうし院」らの目線で情感豊かに語り、浮かび上がらせた

 ▼坦庵には反射炉以外にも日本初がある。例えばパン。兵隊の保存食として着目し作ったため、「パン祖」とも呼ばれる。業績は素晴らしい。知名度を全国区に高めることはできないか。