休日の朝、ふと海を見たくなる衝動に駆られた。伊豆に住む者の特権で、少しばかり車を走らせればいくつかの海岸にたどり着ける

 ▼先日、南伊豆町の弓ケ浜海岸へ出掛けた。砂浜にあった流木に腰掛け、寄せ返す波に合わせ深呼吸をすると穏やかな気持ちになった。誰が書いたか忘れたが、全国紙でこれを“波禅[なみぜん]”と紹介していた

 ▼与謝蕪村の「春の海ひねもすのたりのたりかな」が浮かぶ。俳人・鷹羽狩行さんは「冬の海は漢字や楷書、春の海はひらがなや草書という感じがあろう」(講談社版、カラー図説・日本大歳時記)という

 ▼本紙に読者が寄せる俳句や短歌、川柳作品が数多く載る。文芸担当者によれば、投稿団体は合わせて110ほどあるといい、これに個人の投稿が加わる。団体の場合、ご高齢の方が多いためか近年、活動の継続が難しくなり、投稿を断念するケースもあるそうだ。筆者の父も生前、地区の愛好者と俳句会を立ち上げて投稿していたが、父の没後に自然消滅した

 ▼海や山の自然に満ちあふれ、四季折々の変化を皮膚感覚で捉えられる伊豆に住むことは、喜びの一つである。句や歌を詠む素材に事欠かないと言える。老若男女を問わず、より多くの読者の投稿を願う。