3年前の夏、箱根駅伝を目指していた長男と3千メートル級の高山に登った。その半年前、長男はけがが重なって記録が伸びず、大学の駅伝部を退部していた。高山は初めて、しかも高所恐怖症という長男を半ば強引に連れて行った

 ▼行き先は北アルプス槍・穂高連峰。上高地を発着点に槍ケ岳、南岳、北穂高、涸沢岳を経て、涸沢カールから下山する3泊4日の山行で、2人用のテントを担いで行った

 ▼天を突く槍の穂先では、畳5枚ほどの岩場で「♪会ったこともない 話したこともない…」と、ギターを手にしたリピート山中さんの生演奏を聞くことができた。新田次郎の小説「孤高の人」のモデルとなった単独行の登山家・加藤文太郎を歌った「孤高の人よ」という曲だ

 ▼だらだらと続く上り坂で長男に重いザックを担いでもらい、逆にV字状に切れ込んだ大キレットでは尻込みする長男を励ますなど、たくさんの思い出ができた。何よりも満天の星空の下、ウイスキーの水割りを飲みながら、長男と人生を語り合ったことがかけがえのない宝となった

 ▼人生、山あり谷あり。特に若い時には挫折や過ちも少なくないだろう。そんな時でも、山は桁外れの包容力で受け入れてくれる。きょうは「山の日」。