伝説上のムー大陸は一夜のうちに沈んだというが、伊豆にも一夜のうちに消え去った山がある。狩野川台風で山体崩壊した伊豆市筏場の蛇喰山(じゃばみやま)だ。60年目の今年、近くを歩いてみた。

 当時の筏場は太古の噴火で埋もれ化石になった杉材「神代杉」の産地で山師が一獲千金を夢見て採掘にあたった。大見川の蛇行部にあった蛇喰山はもともと軽石質火山灰の堆積土で覆われたもろい山体で、無数の採掘坑でさらに弱っていた。

 60年前の9月26日、堤防を破った濁流が山体に激突、土を削り真っ二つに割った。翌朝には荒れた谷が現れたという。既に現場は木が繁り往時をしのぶのは案内看板だけだった。今や中伊豆でも知る人は少ない。(航)