伊豆箱根鉄道駿豆線の全車両のつり革の中に一つだけ、ハート形のものがある。たまたま乗った時に、偶然見つけた。何だかうれしかったが、周りの乗客は全くの無関心。見慣れているのだろうか

 ▼途中で乗り込んできた学校帰りの高校生たちも、ちらりと見ただけ。椅子に座って、一斉にスマートフォンをいじり始めた

 ▼高校生と一緒の電車はもっと騒がしいと思っていたが、意外なほど静かだった。スマートフォンが登場する前の電車内の高校生は、もう少しうるさかったような気がする。ガタンガタンという音が響く車内で、ハート形のつり革が所在なさげに揺れていた

 ▼その時とは違い、伊東市のひぐらし会館で開かれたチェロコンサートの幕間は話し声にあふれていた。平日の昼間とあって、観客のほとんどはシニア層。スマートフォンをいじる人はいない。知人同士静かに言葉を交わしていた

 ▼前半の演奏を振り返っているのだろうか、何を話しているかは分からないが、あちこちから聞こえる楽しげな声が心地よかった。そのざわめきが、後半開始を告げるアナウンスと共にすっと静まった。潮が引くようにという例えを実感した。いつかの電車の中とは違う緊張感に満ちた静けさだった。