京都を旅してきた友人に伏見の酒をもらった。紅葉が色づき始めた頃だったが名所はすでに混雑し、半数近くは外国人客だったという

 ▼後日、東京に出掛けた際、池袋パルコのミュージアムで開催中の「KYOTO展」に行った。会場には京都の伝統工芸の匠と現代アート作家が共同制作した掛け軸や漆器、うちわ、和傘などが飾られ、三つの茶室が表現されていた。伝統技術と先端芸術が融合した斬新な表現に刺激を受けた

 ▼展示場に接するショップには京都の伝統工芸品や和雑貨の逸品が並んでいて、知人の陶芸家が出品した酒器の他、和装小物、お香を買い求めた

 ▼それで思い出したのが哲学者・鷲田清一さん著「京都の平熱」(講談社学術文庫)にある「京都は観光の街ではない」という言葉だ。典型的な内陸型の工業都市であって、西陣織や扇子、仏具、京菓子、桶屋、宮大工、仏像修復、湯葉作りといった職人の伝統技術が、現代の精密工業などに「形を変え生きている」と説明する

 ▼先月まで本紙日曜版に連載された「引き継ぐ―伊豆の職人」で、多くの職人の労苦や尽きぬ探究心の一端を知った。代々受け継がれる技術は形を変えて、いつか伊豆を生かす力につながることだろう。