熱海温泉の老舗・古屋旅館の大浴場「宇宙風呂」跡に残る画家長谷川路可の壁画を取材した際、路可の作品は旧国立競技場にもあったと聞いた。調べると1964年の東京五輪を記念して設置されたモザイク壁画2点で、レガシー(遺産)として保存されるという

 ▼壁画、彫像など記念作品25点の作者の中に宮本三郎の名があり、“熱海つながり”を見つけた気分になった。昭和を代表する洋画家は、歌人・国文学者の佐佐木信綱の没後、信綱が約20年にわたり暮らした熱海市西山町の「凌寒荘」を所有した。増築した画室は今も残る

 ▼凌寒荘は2003年に市が取得し、週末に庭園のみ公開している。管理・運営は信綱を慕う歌詠みの有志グループ「凌寒会」が担う。信綱が丹精した庭の手入れや来訪者の案内に熱心に当たる姿にはいつも頭が下がる

 ▼没後55年、凌寒会として開いた15回目の信綱忌の催しで、高齢化により活動できる会員が限られている現状を聴いた。「活動も限界」と話す会員もいた

 ▼信綱の友人で同様に晩年を熱海で過ごした徳富蘇峰が名付け、多くの門人や文化人との交流の舞台にもなった。知恵を集めて熱海の“文化のレガシー”を守り、活用するすべを考えたい。