もう散っただろうか。「伊豆の瞳」と呼ばれる伊東市の一碧湖を彩る満開の伊東小室桜を2月中旬に撮影した。ひっそりとした静かな湖畔風景の中で、そこだけあでやかなのが印象的だった

 ▼この時、湖畔を散歩する70代の女性に出会った。枯れ枝の箸とビニール袋を持っていた。日課の散歩のついでにごみを拾っているという。「以前に比べて少なくなった。特にたばこの吸い殻が減った」と笑った

 ▼ああ、この人は地域と自宅の庭を同等にとらえて接しているのだと感じた。「環境美化」「環境破壊根絶」と大上段に構えるのではなく、庭感覚で目についたからごみを回収する。庭の延長が地域なのだろう

 ▼以前ほどではないにしろ、観光地だけに名所、旧跡をはじめ人の集まる場所でのごみが目立つ。世界認定からまもなく1年を迎える伊豆半島ジオパークの地だ。自宅の庭感覚で地域、伊豆地区に、と美化意識を拡大できるのならば心ないポイ捨てはきっと減るだろう。伊豆全体を自宅の「借景」ととらえてもよかろう

 ▼「一碧湖は桜もいいけれど新緑、紅葉の時期も素晴らしい」と女性は言っていた。景色も楽しみだが、また枯れ枝の箸を持ってごみを拾う姿を見ることができればうれしい。