日金山は霊山として昔から多くの参詣者が訪れ、熱海の人たちも春秋の彼岸に登ったという。熱海市に住む細田実さん(87)は1997年の春、登山道でもある石仏の道ハイキングコースを、生涯学習の仲間と調査のために歩いた。途中、何かに呼ばれるように傍らのやぶに踏み入り、そしてつまづいた。足元には石塔があった

 ▼郷土史に関心を持つ市民有志らの調査で、石塔は「富士上人」とも称される平安末期の僧・末代上人の宝篋印塔[ほうきょういんとう](供養塔)で、末代は駿河国の出身。伊豆走湯山(現・伊豆山神社)で修行したことも分かった

 ▼有志は日金山を中心とした熱海の歴史を掘り起こそうと郷土史研究グループ「伊豆の日金・熱海を語る会」をつくり、活動を継続する。富士山信仰の源をつくった末代と熱海を発信する「富士山と末代上人熱海の会」の発足にもつながった

 ▼両会の会員らが日金山を桜の名所にしようと先日、コース沿いに「大漁桜」を100本植えた。市内で作出された早咲きの品種で、日金山では、彼岸の頃に咲くと見込む

 ▼細田さんも立ち会い、感慨深げな表情を見せた。思わぬつまづきから始まった“平成の日金の物語”。次の時代にも受け継がれ、大漁桜と共に花咲くことを願うばかりだ。