30年余り前のこと。伊豆急の電車内で偶然、高校時代の友人に会った。東京で働いているといい「伊豆にいても娯楽がないし、面白くない」と言われた。伊豆で働くことを否定されたような気がして腹立たしかったが、言葉にはしなかった

 ▼後日、会社の上司に彼とのやりとりを話すと、「群衆の点になるよりいい」と一言。「人のことは気にせず働きなさい」という意味だと受け止めた。伊豆で働き続け悩んだ時など、その言葉を思い起こした

 ▼今年に入り、東京近郊で働く高校時代の同級生たちと再会した。通勤に2時間かかるのはざらで、神奈川県から小田急で都心に通う友人は「帰りは疲れるからロマンスカーを使うことが多い。金がかかるけど」と苦笑していた

 ▼先日、東京で働き始めて2年になる息子に都内で会った。JRの車内で混雑ぶりを嘆くと「朝はこんなもんじゃない」と即答した。出勤ラッシュを抜け出ることから始まる彼の一日を思いやった

 ▼「平成」の次の時代がやってくる。今春、都会で社会人として歩みだす子どもがいる伊豆の親たちの心境を想像する。わが子には「働きがい」「生きがい」を見つけてほしいと願うことだろう。たとえ群衆の点であろうとも。