「おはよう」「久しぶりだな、元気か」―。その男性に会うのは1日に多くて2回だけ。しばらく名前を知らなかった。初めて会ったのは中学生の時で、40余年前になる。高校生になってからも、男性は笑顔で声を掛けてくれた。家族や学校の先生以外にあいさつを交わす数少ない大人だった

 ▼男性は伊豆急の駅員で、朝夕の通学・下校時に主に駅ホームで顔を合わせると気軽に接してくれた。しばし会話をする程度だったが、見守られていたのだと気付く

 ▼3月、伊豆急が販売した現存する最後の車両「クモハ103」引退を記念した車両の写真入り絵はがきと硬券乗車券のセットを買った。絵はがきの写真を懐かしく眺めながら、あの当時の駅員の穏やかな笑顔がよみがえった

 ▼「クモハ103」の引退は寂しい限り。記念硬券乗車券は、伊豆急下田駅を起点に隣駅までの区間を駅ごとに発行する。第1弾で伊豆稲取駅までの5区間を販売した。5月と7月に5区間を発行し、伊東駅までの硬券がそろうというので求めたい

 ▼後日、伊豆急を利用した際に駅の窓口やホームなどで働く駅員たちの姿に、あの時言葉を交わした駅員の記憶を重ね合わせていた。新たな出会いが生まれる春である。