新年度を迎え、入学、就職など、多くの子どもや若者が新たな一歩を踏み出した。熱海市立初島中を卒業し、市外の県立高に進んだ田中千尋さんもその一人だ

 ▼県内唯一の有人島で育った子どもは高校進学を機に、ふるさとを離れる。船出の時、住民や学校関係者らが港に集まって見送る「島出[しまで]」のセレモニーが風習になっている

 ▼定期船のデッキに立つと、港に集まった人たちとの間に色とりどりの紙テープが渡される。昨年までと違い、見送られる側になった千尋さんは、なじみの人たちからの大きな声援に笑顔で手を振って応えた。その光景に島の人たちと育んできた絆の強さを見た思いで、カメラを向けながら視界がにじんだ

 ▼紙テープをなびかせながら定期船が港を離れると、千尋さんは何度か涙を拭ったが、島を離れる覚悟と準備ができていたのだろう。「初島は住んでいる人が温かい。いいところで生まれ育って良かった」と笑顔を見せた

 ▼翌日、初島小の入学式があり、3人が小中併設の“島の学校”の仲間に加わった。あどけない表情を見せる新入生に、片桐英生校長は紙に書いた校訓「自主独立」を示した。いずれ来る3人の島出の時を思いつつ、言葉の意味をかみしめた。