新元号「令和」がきょう、スタートする。菅義偉官房長官は1カ月前の記者会見で、典拠となったのは「万葉集」と説明した。天皇や皇族、歌人、農民など、幅広い階層の人が詠んだ歌4500余首を収録した現存する日本最古の歌集だ

 ▼万葉集の中で記憶に残っている歌がある。「あかねさす 紫野[むらさきの]行き 標目[しめの]行き 野守は見ずや 君が袖振る」。美しい情景を連想させる枕詞[まくらことば]の「あかねさす」、作者である「額田王[ぬかたのおおきみ]」という名前が印象深かった

 ▼「古代史で楽しむ万葉集」(中西進著)は、「君」である大海人皇[おおあまのおう]子[じ]が答えた歌にも触れながら、人妻である初恋の人・額田王に対し、野の番人がいるのに袖を振って求愛する大海人の熱い思いを解説している

 ▼「万葉」という言葉は万葉集の略称の他に、たくさんの木の葉、万世などの意味がある(大辞林)。新元号には、多くの人の声が反映される社会が永久に続くように、との願いが込められているように思えてならない

 ▼安倍晋三首相は談話で「一人一人が明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる日本でありたい」と述べた。「あかねさす」景色がよく似合う伊豆は、夢と希望に満ちあふれていると信じている。