日没直後に熱海市内の海岸沿いを車で走行中、海の色に目を見張った。だいだい、赤、ピンクが入り交じったような暖色に染まる光景は、同市の日本画家松山英雄さん(77)が手掛けた挿絵とイメージが重なった

 ▼本紙に連載した小説「熱海残照」用に描いた。全43点で、連載時は初回のみカラー、その後はモノクロ掲載だったが、原画は全て日本画用の水干絵の具で彩色されていた

 ▼金泥をテーマ色にして小説のタイトルにもある残照を表したのだと、起雲閣で開催中(7月28日まで)の原画展を訪ねた際、松山さんから聞いた。モノクロで載せても色は生きると考えたのだそうだ。あらためて紙面を見ると、彩色により微妙な濃淡が生まれているのが分かり感心した

 ▼小説は同市に住む中尾ちゑこ(本名・千恵子)さんの第20回伊豆文学賞最優秀作で、熱海が舞台だ。土地の風土や風俗を織り交ぜ、60代後半の女性に起こる変化を書いた。松山さんは文からのイメージで風物や情景を描いた

 ▼原画と一緒に連載紙面も並んでいて、見比べてみるのも一興。29日には中尾さんとのギャラリートークが催される。文と絵、それぞれの手法で熱海を表現した2人の話を通して、土地の魅力を見詰めたい。