梅

凌〓歳寒氷骨羸

喬松修竹是心知

一渓流水倒浸影

五尺短墻低走枝

玉蕊吐香清可掬

瓊花帯雪淡還奇

黄昏浮動横斜月

直是孤山処士詩

  梅の花

凌励[りょうれい]たり歳寒に氷骨羸[や]せ

喬松修竹是れ心知

一渓の流水倒[さかしま]に影を浸し

五尺の短墻[たんしょう]低く枝を走らす

玉蕊[ずい]香を吐き 清く掬[きく]すべく

瓊花[けいか]雪を帯び 淡く還[ま]た奇なり

黄昏[こうこん]浮動 横斜の月

直[すなわ]ち是れ孤山処士の詩

     ◇……………………◇

(語釈)

凌〓[りょうれい]=励[はげ]しく強いさま。

氷骨=梅の樹。

羸=痩せている。音ルイ。

喬松=高い松。

修竹=長く伸びた竹。

心知=心の友。

短墻=短い垣根。

玉蕊=花のつぼみ。「玉」と次   の句の「瓊」は、ともに   美称(物を美しくいう)。

掬=すくい取る。

黄昏=たそがれ。

孤山処士=中国の宋の隠者林逋     (解説参照)。

(訳)

 梅の花

寒さにめげぬ痩せた梅の枝[え]

松と竹とも契りは深い

流れる水に姿を映し

低い垣根に枝を這[は]わせる

玉の蕾は清らに薫り

花びら淡く妙なる姿

黄昏浮動月は斜めに

これぞ孤山の彼[か]の隠者の詩

     ◇……………………◇

 七言律詩。押韻=羸・知・枝・奇・詩(平声支韻)

 他の花に先駆けて、寒さにめげず咲く梅を詠った詩。首聯[しゅれん](1・2句)=その骨張った枝ぶりの梅は、丈の高い松、スッと伸びた竹と心の友の契りを結ぶ(松竹梅)、と詠う。頷聯[がんれん](3・4句)は対句。梅は、清らかな水辺や、清貧の家の垣根のあたりに咲く。頸聯[けいれん](5・6句)も対句。蕾や花は、白くよい香り。尾聯[びれん](7・8句)に、梅を愛し、名詩を作った宋初の隠者林逋[りんぽ](和靖[わせい])が詠われる。

(解説)

 林逋は、中国杭州の西湖[せいこ]の島に隠棲し、梅を愛し、名詩(七言律詩)を残した。その2句、

 疎影横斜水清淺[そえいおうしゃみずせいせん](梅の枝は斜めに水の上)

 暗香浮動月黄昏[あんこうふどうつきこうこん](香りほのかに黄昏[たそがれ]の月)

これは一世を風靡[ふうび]し、後世に詠いつがれた。この詩も、全体にその影響が窺[うかが]われる。

(二松学舎大名誉教授・顧問、全日本漢詩連盟会長)

 ※〓はガンダレに萬