河津町が新年度着工を計画している複合施設の建設予定地。16億円の巨費を投じる事業には反対者も多い=河津町笹原(2014年11月撮影)

 ■「経過説明不十分、議論を」 町長は着工姿勢崩さず

 河津町が2017年度に着工を計画している複合施設整備事業が、賛否をめぐり町を二分する問題に発展している。新年度を目前にして、工事費の増大から設計の見直しを迫られ、着工が延期となるなど計画は“迷走”。「白紙にすべきだ」「お荷物になる」「住み良い町づくりが期待できる」などと反対、賛成双方の主張は隔たりが大きく、政治的思惑もはらんで地域に暗い影を落としつつある。

 「えっ、16億円?」―。元高校教諭でスポーツと社会教育の推進に取り組むNPO法人理事長を務める長田育郎さん(65)=峰=は、最新の総事業費を知って絶句した。「最初は確か8億円だったはず。計画には必ずしも反対でないが、町の情報公開、経過説明が十分でなかったことは否定できない」と語り、徹底した議論の必要性を強調した。

 笹原の旧南中跡地に予定される複合施設は相馬宏行町長が初当選した10年当時から公約に掲げる重点施策。施設は鉄骨造り3階建て延べ床面積約2400平方メートルで、子育て支援室、放課後児童クラブ、生涯学習活動に利用できる300人収容の文化ホール、一時避難を可能とする防災拠点などの機能を併せ持つ。事業費は規模、機能追加、建設資材と人件費高騰により現在の額に膨らんだ。

 計画を巡っては反対派町議が国県の支援のない巨額の建設費、維持管理費、用地の一部が津波浸水域に入ることなどを問題視。16年11月に約3千人の署名を添えて建設の1年延期と住民説明会開催を町に要望し、建設に待ったをかけた。

 14年の初当選以来、一般質問などの場で複合施設の問題点を追及し続ける上村和正町議(50)は「文化ホールは学校統合で将来生じる学校施設や、河津バガテル公園の施設で代替できる。町は長期利用計画も示しておらず、建設を許せば、財政を圧迫し、結果的に町民の負担になる」と主張。膨らむばかりの事業費も「計画自体に問題がある」と切り捨て、子育て支援施設の単独整備、移住・定住促進、観光振興などに予算を振り向けるべきだと語る。

 一方、賛成・容認派は中心市街地の活性化、住み良い町づくりの効果に期待を寄せる。町商工会の飯田正臣会長(70)は「反対派は予定地が商業用地と言って企業誘致や観光振興を主張するが、企業誘致は一自治体には難しい話。ならば河津は子育て支援と教育、文化に力を注ぎ、住み良い町づくりで人口減少に歯止めをかけるべきではないか」と述べ、計画が妥当であるとの認識を示す。

 相馬町長は「設計を見直して事業費を圧縮する。町民に約束した機能を削るつもりはない」と明言。実施設計がまとまり次第、17年度中に補正予算を組んで着工する姿勢を崩していない。

 町長選が来年に迫り、町民からは「政争の具になっている」との指摘もある。「結果がどうであれ町が分断され町づくりが停滞する事態は避けなければならない。過疎、少子高齢化は待ってはくれないのだから」―。過去の政争が残したしこりを振り返り、長田さんはこうくぎを刺した。

(下田支社 晴山文人記者)

 【写説】河津町が新年度着工を計画している複合施設の建設予定地。16億円の巨費を投じる事業には反対者も多い=河津町笹原(2014年11月撮影)