江戸時代より漁業が盛んな伊豆ですが、定置網は江戸時代の末期に北陸富山よりその漁法が伝わったと言われており、その後現在まで200年以上にわたり営まれています。一般の方にはあまり知られていないと思いますが、定置網にもいろいろな種類があります。網に入った魚は出にくい構造になっているものの、基本的には出入りは自由であり、一度入ってきた魚も網から出ていってしまいます。魚の群れ全体を捕獲する巻き網や底引き網など、網を使う他の漁業との大きな違いでしょう。

 日本大生物資源科学部の小島隆人教授の研究によれば、伊豆で一般的な落とし網と言われる方式の定置網では、魚の性質による違いはあるものの、入網した魚の10~30%しか漁獲されていないとの報告もあります。古くから続く効率の悪い定置漁業ですが、資源を傷めず、環境にやさしい漁業であったからこそ、長い歴史を歩み続けることができたのではないかと思います。「定置漁業って、意外と今の時代に合ったエコな漁法ではないのか」と思うのは、私だけでしょうか?

 定置漁場は海岸からも見える所に設置され、一本釣りなど他の沿岸漁業に比べ、しけや波浪など気象の影響を比較的受けにくい。水揚げが容易であり、四季折々の旬な新鮮な魚をほとんど毎日のように提供できるのも大きな特徴の一つだと思います。

 資源の減少や漁業就労者の高齢化により、漁業全体の衰退が著しいと言われる現状ですが、他の沿岸漁業が減少したこともあり、日本の沿岸漁業生産に占める定置漁業の割合は以前の12%から現在は40%以上を占めるまでの重要な漁業となっています。また、伊東魚市場に毎日水揚げされる約6割が定置網による水揚げとなっています。