八方サンゴ

 海底を彩る八方サンゴのヤギ類は幼生のプランクトン時代を除いて、岩にしっかりと固着した着生生活をおくる。骨格となる幹から分岐する枝と枝が絡み合って、網を広げたように樹木状の群体を形成する。植物のように見えるところから、樹木のような動物といわれる。

 群体の表面のいたるところにあるポリプと呼ばれる羽状の8本の触手を広げ、流れてくるプランクトンや有機物を捕らえてエサにしている。一斉にその触手を開いているところは美しい花々を見るようで、しばしば海の底だということを忘れて感動を覚える。

 あるとき、そんな紅色のヤギの一種に釣り糸が絡んでいる姿を目撃した。海上にもルールがあるとすると、道路交通法では、この釣り糸を流した釣り人は業務上過失致死罪に当たるのかもしれない。厳しい自然の海を生き抜いてきた、このサンゴにとっては突然の災難。やがて枯死するだろう姿が、痛々しく心に残るのです。

 【写説】八方サンゴ