研修会で林内作業車に丸太を積み込む参加者=熱海市伊豆山の市有林で

 ■6割占める豊富な森林 就労、観光…膨らむ活用イメージ

 熱海市は2016年度から市域の6割以上を占める森林を活用し、就労機会の創出を目指す持続可能な自伐型林業の構築に取り組んでいる。このほど、5カ月にわたる研修が終了。参加者が実際に樹木を伐採し、運び出すなどの作業を体験した。地域特性を生かした“熱海方式”の林業確立への挑戦が今春2年目に入る。

 昨年4月に開かれたフォーラムには約100人、10月から今年2月まで、毎月2日間ずつ開いた研修には20人が参加した。

 年齢は30~60代、女性4人も含まれた。地域別では県内が11人で、うち7人が熱海市内、神奈川県が7人、東京都、山梨県が各1人の内訳だった。

 ウェブデザイナー、大工、建築士、広告代理店勤務のサラリーマンなど職業はさまざま。未経験者も多かった。

 市有林は838・4ヘクタールで、ほとんどがヒノキ。切り出す立木の選別、伐倒、重機を入れる搬出路(長さ100メートル、幅2~2・5メートル)の敷設など、研修は、姫の沢公園内の市有林で行った。

 緑ガ丘町の生活介護事業所「陽光の園」支援員の井口昌彦さん(46)は、施設長の山内健生さん(38)と参加した。施設利用者ができる仕事があるかどうかを確かめるのが目的だった。井口さんは「プロでも危険な仕事で、利用者には厳しい。体験は施設周りの樹木伐採で役立った。利用者とベンチ作りなどに取り組みたい」と話した。研修ではNPO法人自伐型林業推進協会(高知県)の中島健造代表も講師を務めた。井口さんは「本格的な林業が無理なら、竹を活用する、キノコを育てるなど柔軟な経営講座が参考になった」と語った。

 研修では約50本のヒノキを伐採した。建築用、合板用、まき用、バイオマス発電用チップなどに使われる計画だが、多くはまだ現場にあり、一部を姫の沢自然の家でキャンプファイアに用いた。原木市場における価格などは新年度以降の取り組みで分かる見込みだ。研修参加者から「製材加工をしたい」「特産品を生み出せないか」など、活用に向けてイメージが膨らんでいる。

 重油で加温している温泉ボイラーにまきを使い、コストを削減する利用法もある。環境的には木材が取り込んだ二酸化炭素(CO2)が放出されるので、新たなCO2を排出したことにならないが、今のところ市内にまきボイラーはないという。実用へ民間の動きもある。

 市は姫の沢の市有林を自伐型林業のモデルにしたい考え。高知県などの先進地にはるばる出掛けなくても、市内の民有林所有者が気軽に見学でき、効果や必要性が分かれば、受け入れる民有林が増えていくとみている。

 森本要副市長は「市内の観光業者が、冬に副業で自伐型林業を行っていけば、所得安定の支えになる。熱海は、週末に首都圏の人がリフレッシュを兼ねて林業を楽しめる距離にあり、温泉、観光、木工体験も含めてメニュー化していけば独自性が打ち出せる」と話した。

 新年度は初心者対象の研修をもう1クール実施するほか、2016年度の参加者を対象にしたスキルアップ研修を計画する。スキルアップには、すでに修了者15、16人がグループをつくり、参加を希望しているという。

(熱海新聞・前田宏記者)

 【写説】研修会で林内作業車に丸太を積み込む参加者=熱海市伊豆山の市有林