「意思無能力」

 認知症で十分な判断能力がなかったのに、契約が成立したとして、代金を請求されたような場合、どうしたらよいでしょうか。

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 意思能力という概念があります。自己の意思を有効に表示する能力を言います。意思能力を欠いた状態での意思表示は無効となります。従って、認知症の方がした契約が意思無能力(意思能力を欠くこと)で無効となることがあります。意思能力の有無は、事案や問題となる意思表示の内容ごとに、個別具体的に判断されます。

 ですので、認知症の程度にもよりますが、意思無能力を理由に契約の無効を主張し、代金の支払いを拒める場合があります。

 ただし、意思無能力は、無能力を主張する側が立証しなければなりません。認知症の場合ですと、医師の診断書などで認知症にり患していたことと判断能力の低下を立証することになりますが、行為時の医師の診断書がない場合、無効主張が困難になることもあります。

 判例では、不動産売買、百貨店での衣料品の購入が問題となった事案、遺言無効確認訴訟などで、認知症により意思能力なしと判断されたものがあります。

(小田原市・伊奈綜合法律事務所、伊豆の国市出身)