中心市街地で発生した「松原大火」(1988年12月15日)

 ■市制に関わった人に聞く

 市制70周年にあたり、長く市政に携わった人や商工団体の重鎮に思い出に残る出来事を語ってもらった。石井勇・元副市長、海野英夫・元伊東商工会議所会頭、武井昭夫・元市観光経済部長に聞いた。

 ◇家一軒が数分で燃え、まるで紙のよう 元伊東商高会議所会頭・海野英夫さん(74)松原

 伊東市の松原地区で1988年12月15日に出火し、全焼24棟、半焼2棟、部分焼15棟などの甚大な被害を出した「松原大火」。当時、市消防団の本部長として消火活動の陣頭指揮に当たった。

 「会社が近くなので、サイレンを聞いて駆け付けた。当時の団長鈴木藤一郎さん(元市長、故人)と自分が一番乗りだった。通りの店から火が噴き出していた。これはだめだ、大変なことになると思った」

 風の強い日だったという。「風にあおられて次々と燃え広がった。一軒の家が数分で燃え上がり、まるで紙でできているようだった。あんなすごい燃え方を見たのは初めてだった。すぐに水が足りなくなり、松川(伊東大川)からホースをつないだのを覚えている」。鎮火したのは明け方。「寒くて寒くて、みんなずぶぬれでがたがた震えていた」

 被害は大きかったが、立ち直るのも早かったという。「建設業者が無償でがれき処理を行うなど、みんなで力を合わせて復旧に取り組んだからだと思う」

 ◇田方の消防長に救助の応援要請 元伊東市副市長・石井勇さん(69)富戸

 2004年10月、伊豆半島を横断し、伊東市内も宇佐美で大きな被害が出た台風22号。当時は消防長として災害対応に尽力した。土石流の起きた現場周辺に行き、状況確認に努めたほか、近隣の消防に応援要請もした。「『食品会社が孤立して従業員が取り残されている』との報告を受けたが、(土石流のため)こちらからは現場に行けない。田方消防の消防長に直接連絡し、救助を依頼した」。従業員は無事自宅に戻ることができたという。

 主査時代の1986~92年、旧庁舎(現松川藤の広場)の1階受付横にあった「市民サービスセンター」で、市民から寄せられたさまざまな声に対応した。担当の部署へ行き、直接職員を動かすこともあった。「市民とじかに話ができ、解決することで喜ばれた。市役所生活の中で一番充実していた」という。「公務員の基本を忘れてはいけないと思った。人間的にも成長した」と述懐する。今でも対応した人に会うと、声を掛けてくれるという。

 ◇熱中症の生徒、一人一人見舞う 元伊東市観光経済部長・武井昭夫さん(72)桜木町

 按針祭は観光会館をスタートし、市中心部でパレードを行っていた。市内著名人が仮装して参加するなど、盛大に繰り広げられていた。観光課で担当だった1972年8月10日は暑い日だった。パレードの一行は、何とかゴールの西小に到着したものの、吹奏楽で参加していた高校生十数人が熱中症で倒れた。その日のうちに市観光協会長らと一緒に、生徒一人一人の自宅まで見舞いに行った。全員が軽い症状で済み、ほっとしたことを今でも覚えている。

 当時は観光会館別館が建設される前で、按針祭の式典は同所にあった安針公園で開催していた。別館建設に伴い、79年に会場が観光会館ホールへ変更になった。室内で実施するに当たり、外務省儀典局(当時)まで出向き、会場に掲示する関係5カ国の国旗の並び順や式典の方法などを確認した。国際ルールに沿った国旗掲揚など、その時に決まった基本で現在も続いていると思うと感慨深い。

 ■満70歳に聞く

 伊東市は間もなく“満70歳”。伊東と同じく古希を迎える市民に、思い出話や将来展望などについて聞いた。

 ◇地域スポーツの発展に力 小林健明さん(宇佐美)

 伊東市内の社会人ソフトボールチームで、現役最高齢投手として知られる。昨年のオール伊豆社会人ソフトボール大会で好投し、所属チーム・桑原クラブ(宇佐美)の準優勝に大きく貢献した。

 宇佐美中、伊東高で野球に励み、“鉄壁の三塁手”として注目された。早稲田大に進み、ソフトボール同好会に入り腕を磨いた。卒業後はOB会を伊東に誘致。市内のソフトボールを盛んにする道筋をつけた。

 現在、宇佐美体育振興会長を務め、地域スポーツの発展に力を注ぐ。現役選手として、毎日のスクワット50回は欠かさない。「伊東市と同じもうすぐ70歳。野球やソフトを通じ『継続は力なり』を学んだ。生涯現役を貫きたい」と元気に語る。

 ◇自然の美しさに“一目惚れ” 鍋迫泰子さん(八幡野)

 9年前、東京から伊東へ移り住んだ。障害者福祉施設に長年勤務した経験を生かし、3年ほど前から民生・児童委員として働き、地域貢献している。「伊豆高原は、お年寄りがとても多い地域。少しでも外へ出てもらえるよう元気づけたい」と張り切る。

 観光で伊東に来たとき、城ケ崎海岸や大室山といった名所を巡り、自然の美しさに“一目ぼれ”。移住を即決した。誕生日は8月10日。按針祭のメーンイベント・海の花火大会の開催日に満70歳を迎える。

 「一度も見たことがないので、今年こそ自分へのご褒美に、ぜひ見に行きたい。花火が自分と(70周年の)伊東市の古希のお祝いになってくれたら感慨深い」と目を輝かす。

 【写説】中心市街地で発生した「松原大火」(1988年12月15日)

 【写説】土石流で押し流された乗用車=宇佐美の県道伊東大仁線(2004年10月9日撮影)

 【写説】盛大に繰り広げられていた昭和50年代の按針祭パレード

 【図表】市制施行からの「伊東市の歩み」