ウミイチゴ

 以前、ダイビングの先達に深潜りをするKさんがいて、指導してもらったことがある。彼は常々、深く潜るときは水深10メートルと30メートル付近に呼吸器付きのボンベを用意して、急に上がると危険なので、残量の少なくなったボンベを取り換え、ゆっくりと減圧しながら浮上浮上してくるのだ。教えられたのは、40、50、60メートルとその深さの水圧に自分の肉体を慣らしていくこと。

 深場の生物に興味があった私は十分な睡眠をとり、毎日毎日訓練をした記憶がある。結果、空気ボンベで、カメラが水圧で破損しないか気にしながら、82メートルまで潜ったことがある。

 その途中のこと。ピンクのかわいいウミイチゴが乱立している所があった。幻想的でオトギの国に迷い込んだように感じた。各個体の高さは約10センチ、径は5センチほど。まっ白なポリプを伸ばす姿がとても美しく見えた。八方サンゴの仲間で、ボウトサカとも呼ぶ。

 しかし、いくら海に潜っても、人間は空気がふんだんにある陸上の生き物だとつくづく痛感するのです。

 【写説】ウミイチゴ