南伊豆町下賀茂温泉は湯治やスポーツで多くの人が訪れている。昭和10年ごろから5年間、慶応大水球(ポロ)部が福田家旅館で合宿した。桜の咲くころ船とバスで30人ほどが来た。朝7時に起きて体操・ランニングし、1キロ先の温泉プールで本格的な訓練をした。バタ足、ピーピーダッシュ、リターンダッシュと厳しい。合宿の様子を記した詩が残る。

 この温泉プールは旅館伊古奈のもので全国的に珍しかった。戦争で都市部のプールが失われたのか、昭和27年のヘルシンキ五輪で好成績を残した水泳の古橋、橋爪選手も伊古奈で猛特訓した。当初27メートル6コースだったが、競技の都合か25メートルに短縮された。私たち子どもも授業でバタ足など練習方法を教わった。今プールはなくなった。

 昭和58年秋、伊古奈に巨人軍の王選手がキャンプに来た。世界のホームラン王は大変で、私の子どもは学校の行き帰りお邪魔した。大人は静かに応援したが、残念ながら翌シーズン限りで引退した。今年優勝のソフトバンクを見ると当時を思い出す。伊豆の国市に長嶋ロードができたが、引退当時の長嶋選手は入間のゴルフ場に来た。

 昭和20年末、大相撲巡業があった。千代の山関、里山関を筆頭に栃錦関ら大勢の関取が分宿し田んぼのテントで相撲を取った。鮮烈に記憶に焼き付き、栃錦関のファンになって久しい。

 近年はホテル河内屋に琴風こと現尾車親方が宿泊し親交が続く。河内屋は瀬戸内寂聴さん、将棋の中原名人も泊まり温泉を満喫。ほかに高橋英樹さん、加藤茶さん、神田正輝さんら多くの俳優がロケに訪れている。

 映画「伊豆の踊子」のロケの多くは古賀政男さんが好んだ鈴木屋旅館を元に撮られた。石廊崎ジャングルパーク跡地も整備が進む。風光明媚(めいび)な南伊豆をロケに使ってほしい。

 (南伊豆町、郷土史家グループ「南史会」会長)