ならいの風が吹き始めたこの季節、旬の魚といえば、大型で脂の乗ったキンメダイです。旬は2月ごろまで続きます。

 以前は、ごく限られた水揚げの産地だけで食べられていました。最近は、各地でブランド化が進み知名度が上がって全国的になり、高級魚の仲間入りをしました。築地市場では、伊豆の地キンメとして「伊東キンメ」「稲取キンメ」「下田キンメ」「須崎の日戻り金目鯛」は有名になりました。そして、一年中漁獲されるようになりましたが、その分、季節感が薄らいてきました。しかし、旬になると特に高い評価を得ているそうです。

 水深200メートル以深の岩礁域に棲息しているキンメダイの生態は謎だらけと言われています。今では、ピーク時の半分以下しか捕れていないそうです。水産関係者によると「先行きが危ぶまれているが、漁獲量が回復する可能性はある」と話していました。

 調理方法などは、江戸時代の料理書には出てきません。明治に入ってから食用とされたようです。そして、キンメダイ料理といえば、やはり「煮付け」です。

 思い出すのは、子どもの頃に寒い夜の夕食で、ちゃぶ台の真ん中に赤くて大きなキンメダイの煮付けだけが置かれていて、取り囲むようにして家族5人で食べたことです。

 漁師町の新井で生まれ育った母が作る煮付けは、しょうゆと砂糖とみりんを入れ、ぐつぐつと煮てキンメダイの脂が混じり、味が濃くてしょっぱいけど甘い味付けでした。姉は、煮汁をご飯にかけて食べていました。目玉は、いつも兄弟(姉、私、妹)で取り合いになりました。最後は、父がキンメダイに熱湯をかけて骨のだしと煮汁の混じった汁を作り、みんなで飲み干したものでした。

 今では、各地で「煮付け」以外に多くの調理法が考案されています。どういう訳か、キンメダイは十数年に一度大発生して大漁を支えているそうです。