熱海梅まつり将棋大会・第3譜B級

 先手・脇本秀信(伊豆の国) 後手・淡島裕(熱海) 観戦記/石田豪成

 ■ともに熟考型

 伊豆の国の脇本秀信さんは長考型ではない。早指しタイプでもない。熟考型である。熱海の淡島裕さんも、まさに熟考型である。観戦子にとってはありがたいことだ。あまりに早いのは記録が追いつかないからだ。

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 その熟考型の淡島さんが□5九角と打ち込んだのが第1図である。□3七角成と□7七角成が狙いだ。どちらが第1目標だったのか、局後の淡島さんは多くを語らなかった。対する脇本さんは□7七角成の方が嫌だったのだ。だからこそ■6八歩と受けている。盤側の私は、淡島さんの勝勢を確信した。□3七角成が実現するからだ。中盤の難所の今、望外の戦果を得ることになる。淡島さんは□9八歩と玉頭をたたく。■同玉の次にこそ□3七角成かと思って見ていると、淡島さんの思考は全く別の所にあった。

 その後は両者熟考を重ねながら第2図となった。■6五香打の銀取りに淡島さんは□6四歩とは打たなかった。その大切な一歩を□3三歩と打ったのである。私には、含みある異次元の指し手のようにも見えた。ここで脇本さんはすぐには■6三香成とはせずに■3六角と急所に角を据えて不敗の態勢を整える。この後、指し手は続いたが淡島さんに勝機は訪れてはこなかった。

 ■静岡東高将棋部部長

 この日、若者の対戦に付き添って、手際よく棋譜を取っている若いお母さんがいた。ポンポンと進む早指しの記録を取っていくのは、容易なことではない。閉会式の時、その女性が私の近くに立っていた。勇気を出して声を掛けた。

 「朝から拝見していましたが、お見事な棋譜の取り方に感心させられています。息子さんですか」

 女性は明快に答えた。

 「あれは生徒たちです。私たちは静岡東高の将棋部です。そして主人には技術指導の顧問になってもらっています」

 そのご主人はすぐそこにいる。見事な夫婦像、見事な教師像を私は見た。

 ※この観戦記にご協力くださった対局者各位、関係各位に厚くお礼申し上げます。

 【図版】1図(後手5九角打まで)

 【図版】2図(先手6五香打まで)