稲取銀水荘が働き方改革で新設したダイニングレストランで営業準備をするスタッフ=東伊豆町稲取

 ■若者定着せず高齢化進む 「若い女性憧れる職種へ環境改善」

 東伊豆町内の団体が80人規模の宴会を金曜日に企画し町内の旅館を予約しようとしたところ、数軒に「会場は空いているが、宿泊客対応で手いっぱい」と断られたという。

 町の基幹産業である観光の中枢を担う旅館業界の人手不足が続いている。就業する若者が少なく、勤務・拘束時間の長さなどから若手従業員が定着せず、高齢化も進む。

 町商工会は2010年度から、旅館・ホテルの合同企業説明会を開催し大学や専門学校の新卒者採用をサポートした。主に東京都や神奈川、千葉県の学校に呼び掛け、町内や都心で開いた。毎年4~11社と学生30~112人が参加、採用内定5~13人を出したが、十分ではなかった。17年度からは伊豆地区市町などでつくる美しい伊豆創造センターが主催している。

 人手不足は稲取の大手老舗旅館「稲取銀水荘」(100客室、480人収容)も例外ではない。個人客が夕・朝とも部屋食のため、特に客室係は夜遅く朝早い勤務時間と不規則な休日が敬遠され、若い人がなかなか続かない。そこで働き方改革を断行した。

 1月にワンフロアを改装し千平方メートルのダイニングレストランを新設、60組約200人がゆったりと食事できるようにした。従来の部屋食プランに引けを取らない、コース料理を一品一品出すグレード感ある新たな宿泊プランを創設した。

 併せて飲食提供をスムーズにできるように機能的ワゴンや通信機器を導入するなど、サービススタッフの業務を改善した。勤務は午前6時~午後3時ごろ、午後1時~9時半ごろの2シフトを中心にし、休日を事前に決めやすくした。制服には簡易に脱ぎ着できる着物も取り入れた。サービス係の女性(31)は「子どもと過ごす時間が増え、休みもきちんと取れるようになった」と喜ぶ。

 プロジェクトチームで1年ほどかけ改革した加藤晃太(あきひろ)副社長(36)は「社員にハッピーな気持ちで働いてほしい」と強調し「ゆとりがなければ良いおもてなしはできない。働きやすい環境でお客さまの満足度をさらに上げていく」と話す。

 旅館業界の雇用対策に関しては「業界自体の地位向上が必要。若い女性が憧れる職種に選んでもらえるようになれば素晴らしい。働き手が前向きに考えられる環境づくりが求められる」と課題を挙げる。業界の努力をサポートし、若者の就業を拡充する行政の施策が求められる。

 【写説】稲取銀水荘が働き方改革で新設したダイニングレストランで営業準備をするスタッフ=東伊豆町稲取