このほど出版された「伊豆の仏像修復記」

 本紙に2015年6月から1年間、日曜日ごと55回にわたり連載した『伊豆の仏像修復記』を一冊の本として刊行した。

 その報告のため、2週続けて伊豆を訪ねた。

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 4月7日、最初に寄った伊豆の国市奈古谷・国清寺を管理している高岩院のご住職はあいにくご不在だったが、開放されている仏殿のご本尊には面会できた。

 伊豆市吉奈の善名寺ではご住職にお会いでき談笑。突然の訪問にも関らず、特別に薬師如来のお厨子を開けて下さり、久々にお像との対面もかなった。

 下田市宇土金の上原美術館では学芸員諸氏の丁寧な案内を受け、新装なった空間の柔らかな光に包まれた吉田寺諸尊像と再会した。帰路、昔何度か調査した蓮台寺の大日如来像の修理完成特別開帳にも運良く立ち寄れた。

 翌日は本を扱ってくれる伊豆市柏久保の「長倉書店」や同市修善寺の「街ナビゆるり」にあいさつ、お世話になった方々も訪問した。花祭りで飾られた修禅寺では、残念ながらご住職には法務でお会いできなかったが、料理上手な奥さまから出版のお祝いの言葉を頂戴した。

 2日間では函南町のかんなみ仏の里美術館には寄れず、翌週土曜日早朝、再び訪ねた。

 開館時間ぴったり。着いたらずいぶんにぎやかだ。それもそのはず、開館7周年と平成大修理完了の記念式典が今まさに開催されようとしていたのだ。

 突然現れた私に館の関係者は皆驚き、飛び入りで式典に参加するよう勧められ、急きょ一番前に座席を設けてくれた。

 町長や来賓の祝辞を聞きながら、1984(昭和59)年の桑原薬師堂初来訪、その後の調査で実慶の銘を脇侍像内に確認、県指定の十二神将像他15体修理途中での美術館開館、町指定5体修理途中での重要文化財阿弥陀三尊の観音菩薩像左腕の発見などが頭の中を駆け巡る。

 伊豆の仏さま方と実慶が、薬師堂の時代から関り続けたご褒美に、締めのこの日に招いてくれた、と思うと感慨もひとしおだった。

 S館長さんはじめ、顧問のS先生、長年お世話になった町文化財担当Nさん、現職担当者、元保存会の方々など、ほぼ全ての関係者にお会いでき、館内でお昼までごちそうになった。

 温泉には漬れなかったが、この土地の仏と人の温かさを改めて感じた今回の伊豆巡りだった。

 (さいたま市在住)

 【写説】このほど出版された「伊豆の仏像修復記」