伊東市八幡野に既に完成しているメガソーラーの一つ。奥に大規模な伊豆メガソーラーの計画がある

 ■工事中含め6件、審査3件―伊東 八幡野に注目集まるが…

 伊豆半島のメガソーラーの中で、多くの関心を集めるきっかけとなったのが伊東市八幡野の計画だ。市によると同市の状況は稼働済み5件、現在工事中1件、市指導要綱に基づく土地利用の事前申請の了承3件。FIT法(再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度)認可資料では導入3件、認定12件(昨年9月)となっている。

 稼働済みは赤沢の伊豆ニューエナジー、宇佐美の斉藤組、吉田のまほろば発電合同会社、八幡野のイーゲート、岡の二葉商事。

 斉藤組の施設は県道宇佐美大仁線のカーブ奥の斜面、旧名草園の上方。名称は天気山太陽光発電所。イーゲートの施設は八幡野の市霊園に通じる市道入り口付近で、その奥に発電出力0・9メガワット、開発面積0・99ヘクタール、パネル4千枚のメガソーラーにはわずかに達しないイスズの施設もある。

 工事中の宇佐美(留田)の大原興商は、熱海市網代との境付近の以前、キャンプ場などとして開発された場所で、周囲には多くの人家がある。下方を国道135号が通る。

 事前申請了承は十足の未来ホールディングス、八幡野の伊豆メガソーラー合同会社、鎌田のブルーキャピタルマネジメントの3件で、伊豆メガソーラーは土地利用の本申請(法的な拘束力なし)をせず宅地造成等規制法(宅造法)や森林法など個別法の許可を取って事業を進める方針という。未来ホールディングスは本申請中、ブルーキャピタルは本申請の手続きはまだ。

 伊豆メガソーラーの計画地は伊雄山を囲む別荘分譲地の計画中断地などで、スギなどの人工林を大規模に伐採する必要があり、土砂災害や海への土砂流入で漁業やダイビングなど観光業への影響が懸念され、またパネルを敷き詰めることで自然景観の悪化も心配されている。漁業者やダイバーらは建設差し止めを求める仮処分申請を地裁沼津支部に申し立てている。事業者は砂防ダムの設置や既存ダムの浚渫[しゅんせつ]などを提案するが折り合いが付いていない。

 一方で伊豆で最もメガソーラーの建設、計画が多い伊東市では、来年度から再来年度以降に固定資産税の税収増が見込まれる。藤原広臣・課税課長(58)は「試算はしてないが相当額が見込まれるのは確か」という。逆三角のような形で徐々に少なくなるが、稼働する限り(FIT法では20年間)、税収が期待できるのも事実だ。

 ■本来県が許可、権限委譲で市に 市ではチェック限界―宅造法 

 八幡野のメガソーラーは森林法の林地開発(開発面積1ヘクタール以上対象、県許可)で森林伐採面積に誤りがあり、宅造法でも造成面積に関する数値を誤り(いずれも業者側のミス)、県などの最終判断を待つ状況だ。宅造法は本来知事の許可だが、伊東市は権限委譲により2006年度、許可業務を県から引き継いだ。熱海市、伊豆の国市、御殿場市も権限を委譲されている。

 宅造法は開発が丘陵地に拡大し、がけ崩れや土砂の流出を防止するため指定区域内の宅地で切り土2メートル超、盛り土1メートル超、切り土・盛り土で面積500平方メートル超などが対象。市は2月に「定められた基準を満たしている」として許可した。

 いたずらに判断を延ばしたり、条件を満たしているのに許可しなかったりした場合、業者に訴えられるケースもある。だが住民団体は「市の判断に納得できない」として行政訴訟を起こす構え。「本来、県がする判断を地方分権の名の下に市に委ね、市も権限委譲を受け入れ“もらい事故”に遭ったよう。裁判になれば気の毒としか言いようがない」と他市町職員はいう。

 市が許可した書類に100カ所以上の誤りのあったことが外部からの指摘で分かったことに対し、建設関係者は「委譲で審査手続きは速まったかもしれないが、少ない人員、専門職がいないなど能力面も含めて市の対応には限界がある。普段なら対応できたのかもしれないが、申請が多く出され、規模も大きいため仕事量が増え、チェックが甘くなったこともある。許可取り消しの条項もあるが、故意に偽ったかを証明するのは難しい」と寸評した。

 ■伊東の生命線守る 古道史跡指定、宇佐美困難? 1キロ以上離す追加―規制条例 

 伊東市はメガソーラーを規制する「美しい景観等と太陽光発電設備設置事業との調和に関する条例」を6月1日に施行する。市内全域を抑制区域に指定、住民や農林水産業者への説明、市長の同意を必要とし、太陽光パネル面積1・2ヘクタール超は認めない―との内容。小野達也市長は鎌田に計画されている八幡野と同等の大規模施設に関し「5月中に関係法令を満たすことは考えにくく、建設は難しい」との考えを示す。

 ただ違反した場合、業者名公表などの罰則しかなく、「国などの許可を得ているにもかかわらず市が認めないのは納得できない」として業者が市を訴えるケースも考えられる。山梨県内では実際、自治体が訴えられ敗訴した例がある。状況は少し違うという。

 長沢一徳・都市計画課長(58)は伊東市の固い決意をこう語る。「市内全域を抑制区域にし、大規模施設を認めないのは自然イコール観光が伊東の生命線だからだ。市の財産(自然、観光)を守るために対応していく」とし、「判例がなく未知の部分もあるが、FIT法の中には条例を順守するとの一文もある。国へ報告し判断を仰ぐことになるが、業者側はFITの許可取り消しを最も恐れている」。

 宇佐美―熱海市網代の古道「東浦路」沿いにも大規模ソーラー計画がある。宇佐美多賀地、日本グリーン合同会社、発電出力15メガワットの事業で、FIT法の認可が下りている。市土地利用の事前申請はまだ出ていないが、市はさきごろ計画地沿いの古道を市文化財に指定した。杉山宏生・生涯学習課長(50)は「市文化財になっても計画を規制(阻止)することはできない。ただ歴史的に貴重な古道の近くにソーラー施設を整備するには手続きが面倒になる」と指定の意味を語った。

 さらに長沢・都市計画課長は「規制条例の施行日までにパネル面積1・2ヘクタール以下であっても太陽光施設は1キロ以上離す―との規則を追加する。熱海境の留田の施設があるため、建設は難しくなるのではないか」との見解を示した。

 ■違法伐採で中断、下多賀 国史跡近くにも太陽光―熱海

 熱海市には土地利用指導要綱はなく、2015年に事業区域1千平方メートル以上を対象に市太陽光発電設備設置事業指導要綱を設けた。地元説明会の開催や理解を得るよう努めるなどと定める。さらに同市には自然景観の保全を図る市風致地区条例があり、昨年10月に同条例の許可等審査基準を一部改正した。

 市まちづくり課の浪川和彦・都市計画室長(52)は「太陽光や風車などの工作物について建物と同等の基準を設けた。自然豊かな1種地区で幅50メートル、高さ6メートル以内、市街地に近い2種地区で幅80メートル、高さ9メートル以内とし、工作物の距離が10メートルを超える場合は別の工作物と見なし、間のスペースは緑化を求める」と解説した。違反者は市長が許可取り消し、変更や開発停止を命じることができ、命令に違反した場合は50万円以下の罰金を科す罰則もある。伊東市の規制条例に比べかなり厳しい。

 FIT法の認可が下りている市内のメガソーラー計画は上多賀白石のHNロジ、発電出力約1・8メガワット▽熱海字林ケ久保の大和グリーンエネルギー、1・2メガワット▽下多賀のビッグステップ、1・96メガワットの3件。

 下多賀は敷地8・5ヘクタール、施設用地0・97ヘクタール、発電出力は市への届けでは1・3メガワットで、昨年9月の市議会で違法伐採が問題になった。森林伐採面積が1ヘクタールを超え、県の森林法に基づく林地開発が必要となり手続き中。「市関係では宅造法の許可を取っておらず、風致地区条例では許可以外の場所を施工したため是正計画の提出を求めている」と浪川室長は説明する。

 HNロジは国道付近の広大な敷地に構想され、まだ初歩的な相談段階。大和グリーンエネルギーは相談もないという。規模は大きくないが、国史跡になった下多賀(中張窪)の石丁場遺跡隣接地にも太陽光施設が完成している。

(文、写真 森野宏尚)

 【写説】伊東市八幡野に既に完成しているメガソーラーの一つ。奥に大規模な伊豆メガソーラーの計画がある

 【写説】熱海市境の以前キャンプ場だった場所に整備中のメガソーラー=伊東市宇佐美留田、今年3月