吾妻山(右側のとがった山)の裏側に二つのメガソーラーが計画されている。県道を挟み反対側にも二つ計画=下田市加増野

 ■地元はいずれも賛成 県内初元ゴルフ場コースにパネル

 下田市で着工しているメガソーラーは田牛のエイトと、加増野の倒産したゴルフ場、下田カントリークラブのコースを活用した雅の2件。

 田牛は事業者の都合(硬い岩盤出土で規模縮小、計画一部見直し)で現在工事を中断している。乗馬センターの稲葉ホースファミリー向かいの林地を伐採、ダイナマイトによる岩の破砕も行ってきた。建設地の反対斜面には碁石浜の別荘地がある。

 加増野は本年末に完成予定で、新たな造成工事も行う。県によればゴルフ場の敷地内でのソーラー整備はあるものの、コースにパネルを敷き詰めるケースは県内初ではないかという。

 全国的には経営不振のゴルフ場跡地への発電施設整備は、新たな大規模な造成工事を必要としないため参入例が多いようだ。

 加増野地区にはこのほか3施設が計画され、いずれも林地を開発、樹木の伐採や造成を行う。地元関係者らによれば同ゴルフ場に隣接し、以前9ホールを増設予定だった山林など(観音温泉のある横川地内も含む)に佐川太陽光発電、発電出力1メガワット、県道を挟んで反対側にある吾妻山の北側に隣接してRE―RE、同1・5メガワットと日新メガソーラー合同会社、同1メガワットが計画(事業者名や発電出力はFIT法=固定価格買い取り制度=の認可資料)。いずれも既に用地買収や地元説明などを終えている。

 前区長の和泉哲夫さん(68)は「区の総会で区民の過半数が賛成した。2施設の建設地には財産区の土地も含まれ、売却の賛同も得た。加増野地区は市水道が整備されておらず(地区内に4組織の簡易水道)、反対者からは環境と水問題(飲料水や水田)を心配する意見があり、これが満たされればOKということだった」と話し、業者との間で水、環境、災害発生時の対応で協定書も取り交わしているという。

 また現区長の村山松範さん(67)は「ゴルフ場隣接地に整備する事業者には新たに水道の井戸を掘ってもらい、沢の表流水を水道に使ってきたわれわれの長年の懸案が解決した。従来の3倍ほどのダム(調整池)も増設予定で、10年ほど前にコース拡張予定地の人工林を皆伐した際も被害は出ておらず、ソーラー施設ができても問題ないと思う。全く心配していない」と答えた。

 ■4社で十数億円―市の税収・固定資産税 完成後、電力関連会社が運営か

 下田市加増野のゴルフ場跡地にメガソーラーを建設中の事業者は、地元説明会で「固定価格買い取り制度の期間である20年間で、市に約4億6千万円の固定資産税が納付される見込みだ」と試算額を示し、地元への貢献度をアピールした。

 一方、加増野地区には、あと三つの計画があり、地域住民と市長との語る会では「1カ所おおむね3億円、4施設全体で市に十数億円が入る」として市水道が未整備の加増野地区への見返りを求める意見があった。市側は「その半額も入るかどうか…」と答えたという。税制に詳しい人は全て予定通り完成すれば、稼働後の数年間は市に毎年1億円前後の税収入があるのでは―と推測する。

 メガソーラー事業者は売電するための送電線をどう整備するのか?。和泉哲夫前区長や村山松範区長らによると、南伊豆町内の東電の幹線まで各事業者が協力して約11億円かけ、14基ほどの鉄塔を建てて送電▽完成後には施設を東京電力が管理する―と業者や東電などから説明があったという。「これだけの負担をしてもメガソーラーは事業が成り立つのか?」と驚きの声も聞かれる。

 市によると、未着工の3施設は書類に不備があり、土地利用の事前申請、本申請はこれから。開発面積1ヘクタール以上が対象の県による森林法の林地開発などの許可手続きもこれからだ。

 ある地元関係者は「地元に接触しているのは施工業者で、施設完成後には電力関連会社が運営に乗り出すとも聞く。少なくとも未着工の3社は、元は同一(仲間)の会社のようだ。ソーラー事業は実態が分かりづらく、不信感を招く要因になっている。ガラス張りにすべきだ」と苦言を呈した。

 その上で「原子力発電所が再稼働できないため、伊豆で発電した再生可能エネルギー(下田の太陽光、東伊豆の風力)などで少しでも補おうとしているのではないか」と推測した。

 ■6月議会、規制条例提案目指す 未着工3件どうなる?

 加増野地区に四つのメガソーラー計画がある下田市は、景観や災害(土砂崩れなど)などを心配する声もあり、6月議会で建設を規制する条例制定を目指し準備を進めている。

 同市には太陽光発電に関わるハードルとして景観法に基づく下田市景観計画(景観まちづくり条例)と土地利用指導要綱がある。まちづくり条例は山間地や海岸などは300平方メートル超が対象で、工作物は「原則、公道や公園など公共の場所から見えないような措置を講じる」などの景観形成基準を設ける。2009年に制定され、3年前に改正して太陽光発電施設を追加した。

 土地利用は2千平方メートル以上が対象で、開発率は原則50%以下など。これらは行政指導で罰則はない(まちづくり条例は勧告に従わない場合は、事実の公表)。規制条例も名前の公表など罰則規定のみで強制力はなく、抑止力に期待する考えのようだ。議会で承認されれば10月1日施行予定。加増野の未承認の3事業が対象になるか? 注目される。

 市建設課の白井通彰都市住宅係長(47)は「6月から施行される伊東市の条例を参考に考えている。ただ職員数の少ない市町では条例案を作るのも大変で、市町によって規制の強弱があると弱い所に事業者が集中する可能性もある。県レベルで作ってもらえると一番良いが…」と実情を訴えた。(文、写真 森野宏尚)

 ■特別寄稿=森林を保全していく社会の仕組み作りを

 山地における大規模な太陽光発電施設の建設は、森林の持つ自然の機能を失わせるものである。その計画が地元に受け入れられないものであれば、見直しは必要であろう。

 伊豆では太陽光発電のための開発の是非が問題となっているが、その背後には、森林の機能維持は誰が行うべきかという問題があり、我々はその問題を考えなければならない。

 人間は、山から多くの恩恵を受けている。山には、地形・地質があり、土壌がありそして森林生態系がある。そこは水源となり、森林は二酸化炭素を吸収し酸素を放出し、急な出水や土砂流出を食い止め、木材の生産地となり、多くの生物のすむ場所となり、さらに美しい景観を提供している。こうした山のさまざまな機能が維持されているのは、山林の保有者が、そこを維持しているためである。

 日本では、森林面積の6割弱は私有林であり、その所有者が固定資産税を払い、森林を維持させている。低地に暮らす都市域の住民は、山から多くの恩恵を受けているにもかかわらず、山の自然環境が維持されるためのコストをわずかしか負担していない。

 国内木材産業の先行きが不透明なため、山林所有者は、将来的に林業による収入を見込むことはできず、何らかの開発案件があれば土地を売ってしまうだろう。社会全体で山地の森林維持のための相応の負担をしていない現在は、山地の機能の価値を社会が評価していないことと同じといえよう。社会的共通資本といえる山地の森林を、社会全体で保全していく仕組みを作らなければ、伊東のような開発問題は今後も各地で起こるであろう。

 ◆目代邦康(もくだい・くにやす)

 自然地理学者。京都大大学院博士課程修了。現在、日本ジオサービス(株)代表取締役、元日本ジオパーク委員会委員、元自然保護助成基金主任研究員、神奈川県在住、47歳

 【写説】吾妻山(右側のとがった山)の裏側に二つのメガソーラーが計画されている。県道を挟み反対側にも二つ計画=下田市加増野

 【写説】メガソーラー建設に伴い事業者が水道の井戸を掘るなど施設の整備をしてもらった地域もある=下田市加増野