第11回外岡壮亮杯小中学生将棋大会小学生の部決勝(中)

 ■杉本和嗣(中伊豆小4年) □加藤駿(西小4年) 観戦記/太田信一

 チェアアンパイアはそのジュニアプレーヤーを呼んで何ごとかを話している。先ほどらい、このプレーヤーはポイントが終わるたびに観覧席を見ていた。以後はポイントが終わると足元に目を落としたり、ラケットのストリングのよれを直したりと、顔を上げようとしない。

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 八代弥六段が曇りがちな顔で話しかけてくる。ある将棋大会の子どもの部でのこと、対局中に助言があり、負けた子が泣いてしまったというのである。

 自身の対局が終わった子どもたちが対局中の観戦に集まることは珍しくない。時間がたつにつれ観戦する子は増えてくる。きっと対局している子も、観戦している子も、仲間同士なのであろうか、気安さも手伝って指し手につい口をはさんでしまったのだろう、一人が助言をするとせきを切ったように次から次へと指し手の助言者が続出することは、大人の世界でも同様である。結果、勝敗に影響してしまう。

 真っ先に思い出したのが冒頭のジュニアテニスの試合である。このプレーヤーは観覧席にいるコーチとコンタクトをとっていたのであった。これに気ずいたアンパイアは彼に「次にコンタクトを取ったら失格にします」と告げたのである。テニスのシングルスではいかなる場合も他人からの助言は許されない。コートで倒れた時ですら第三者がその体に手を触れた瞬間にプレーヤーは失格となる。

 将棋においては意識的にせよ無意識にせよ口を出すことは、助言とみなされても仕方ない。問題は対局者がそれを望んでいない場合である。観戦者のマナー違反で対局者が不利益をこうむることは避けなければならない。

 局面は駒組みの頂点に差し掛かっている。先手は■8八に角を手放してしまったが■4五からの開戦の権利を持っている。後手は角を手持ちにしているのが大きい、出遅れ気味の□3三銀も4五歩からの開戦でさばけそうであるのだが、次の待つ手が難しい。加藤君の口からはため息ともつかぬ声が漏れた。私には「一手パスしたいなー」というように聞こえたのだがどうであったのだろうか。

(第2譜)

■5八金右 □5二金左

■7八玉  □4四歩

■3七桂  □2四銀

■2八飛  □3三銀

■9六歩  □9四歩

■8六歩  □6四歩

■8七銀  □7四歩

■8八玉  □7三桂

■9八玉  □6三金

■7八金  □8四歩

■8八角  □1三香

■5六銀  □2四歩

■6八金右 □5四歩

■4八飛(第3譜)

 【図版】第2譜(□1四歩まで)

 【図版】第3譜(■4八飛まで)