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 お茶の後、有紀は寝室以外の部屋や地下室、庭も案内してくれた。

 「こんな庭付きの立派な家、まだ、お若いのにご立派だわ」

 「……と思うでしょ」説明したかったふうだ。

 「じつは、この家の元の持ち主夫婦は長くイタリアで暮らしていて、定年で日本に戻るとき、なんとかイタリアで暮らした雰囲気を再現したくてこの家を建てたんですって。ずいぶんお金もかけたようよ。天井のシャンデリア、これだけで七百万円とか。ご夫婦とも八十を超えて、伊豆山の有料介護施設に入居され、家は売却することになったけれど、売却条件が『安くてもいいから、自分たちが生きている間は、内装を変えず、このまま使用してくださる方』ということなの。その条件のため、なかなか売れなくて不動産屋も困っていたらしいの」

 千代は頷[うなず]く。たとえ千代の貯金で手に入るとしても、この奇妙な家は買わないだろう。

 「でしょう。正面にマリアさま、左右の高窓にはステンドグラス、タイルの床、鉄製のらせん階段、収納は地下倉庫。普通の人は引いてしまうわよね」

 が、小宮山夫妻は一目で気に入った。

 「おかげでお値段も、天井のシャンデリアの三倍ちょっと。広い地下倉庫は主人の現像の作業場兼バイクの解体作業場、バイクは主人の趣味なの。広いお庭は手入れして、主人は撮影の背景にも利用するつもりとか」

 いずれ庭は有紀のセンスで西洋風の花を咲かせ、噴水からも水が噴き出し、息を吹き返すだろう。

 バイクの音が近づき、軒先でピタリと止まる。

 「パパだ!」

 栞が内扉を開け、スカートを翻[ひるがえ]し飛び出して行く。

 【写説】挿絵