第1図(白5七歩成まで)第2図(黒6二銀打まで)

 ■石田豪成 □伊豆の強豪 自戦記/石田豪成

 ・弘法にも筆の誤り

 「弘法にも筆の誤り」というたとえがある。どんな名人、達人でも時には誤ることがあるというのである。本譜のお相手がまさにそれであった。伊豆では広く知られた強豪で、平成中期の対局だった。

 第1図は私の完敗の将棋である。個人戦ならば、とっくに投了するところだが団体戦は最後の最後まで、投了は許されないので2八にいた飛車を6八に回ったのである。対して後手は5六の歩を□5七歩成としたのが第1図である。この歩成が弘法の誤りだった。九死に一生を得たのである。私は、静かに申し訳ない思いを込めて■6二銀と打った(第2図)。後手は、がくぜんとした様子だったが、勝負師であり紳士でもある。おもむろに一礼して投了の意を示した。図らずも、投了の美学を私は見た。本譜に戻って、ここは何が何でも□6七歩打だった。

令和時代の将棋界

 令和元年の最初の観戦記を書く幸運が、私に巡ってきた。感謝あるのみである。

 令和の将棋界はどのような進化を遂げていくのだろうか、世界的普及は私たちの予想を超えて、急速に進む予兆が感じられる。カロリーナ・ステチェンスカ女流1級の誕生は、決して突然変異ではなく、それなりの機運が世界に醸成されつつあると考えられるからである。その世界の中でも中国は最強のライバルになりそうだ。子どもへの普及には並々ならぬ力の入れようである。人口も多い。必ず巨星が出現するだろう。

 日本古来の将棋文化がどのように世界と融合、協調していくか? 楽しみな時代が到来している。

 日将連熱海支部の会員の一人に、日本国籍を取得した米国紳士がいる。日本人以上にきれいな日本語を話し、レーティング棋戦にも参加している。慶賀この上ない将棋の国際化である。

 【図版】第1図(白5七歩成まで)

 【図版】第2図(黒6二銀打まで)