事業継承への思いを語る三島理事長=松原湯端町の伊東旧見番

 ■解散危機知り決意

 伊東芸妓(ぎ)置屋協同組合(伊東旧見番)の新理事長に、伊東市富戸の会社員三島幸枝さんが就任した。長い歴史を持つ旧見番のトップに花柳界出身者以外が立つのは初めて。組合の苦境を知った三島さんが、「伊東の伝統文化を絶やしてはならない」と、事業継承を決意した。

 人手不足などにより同組合はここ数年、常に厳しい状況にさらされていた。昨年秋には解散を検討せざるを得ない状況になった。そこで立ち上がったのが、習い事などを通じて旧見番の芸妓衆と付き合いのあった三島さんだった。

 「続けたいという若い芸妓たちの思い、培ってきた芸を後進に伝えたいというお姐(ねえ)さん方の願い、それに応えたかった。何となく引き受けたわけではなく、考え抜いて自分がやるしかないと決意した。伝統文化をなくすのは切ない。伊東にとってなくてはならないものだと思うから」

 伊東生まれの伊東育ち。県立伊東高を卒業して、伊東商工会議所などに勤めた。現在は家業の石材店で働く。理事長を引き受けてから、経験とネットワークをフルに活用して事業継承に取り組む。県事業引継ぎセンターの支援も受ける。「資金繰りが大変なので、国や県の補助金を探しまくっている。地元の強みで、困った時は知り合いに助けを求める」

 忙しい日々を送りつつ「先行きは明るい」と胸を張る。「芸妓の仕事は、人工知能(AI)には絶対にできない仕事。心の商売は人間にしかできない」と力強く語る。「芸妓衆はプライドを持って働いている。もっと尊敬されていい」。

 今後について「芸や客に対する時の心得などの伝統は守り続ける。一方で、時代に合わせて変えていかなければならないこともある」。フェイスブックなどSNSの活用、若い人たちにお座敷遊びを教える「大人の社会塾」開催、「伊東温泉芸妓心得10カ条」作り、歴史ある見番の建物の公開など、アイデアはいくつもあるという。

 理事長就任にあたり、置屋を開業した。屋号は「ゆき乃家」。お姐さんたちが考えてくれた。源氏名は本名の「幸枝」をそのまま使う。「旧見番を次の世代にどう引き継ぐかを今から考えなければならない」。ゆき乃家の幸枝さんは先を見据え、日々走り回っている。

 【写説】事業継承への思いを語る三島理事長=松原湯端町の伊東旧見番