生物のフェロモンに多様性が生まれる仕組みを突き止めた元国立遺伝学研究所員で現理研の清家基礎科学特別研究員

 ■科学雑誌に掲載

 地球上の多くの生物が異性に存在をアピールし、種の維持に貢献している性フェロモンについて、国立遺伝学研究所(三島市)の研究チームが分子の構造変化から「多様性が生まれる仕組み」を発見した。動物をはじめ、生物が異性を互いに引きつける作用があるとされるフェロモンに、種の保存だけでなく、新たな進化の原動力になりうる“変異の力”があることが分かった。

 研究成果は23日、米国のオンライン科学雑誌に「分裂酵母における性フェロモンの非対称な多様化」として掲載。元同研究所員で、理化学研究所・生命機能科学研究センターの清家泰介・基礎科学特別研究員(33)、遺伝学研究所微生物機能研究室の仁木宏典教授(58)らが突き止めた。

 チームは米国や欧州、アジアほか世界中に生息する野生の「分裂酵母」(=アフリカのビールから見つかった酵母など)150種から、フェロモンと受容体の遺伝子配列を解析。二つの性を持つ分裂酵母の異性間でフェロモンをやり取りした結果、雌雄の片方のフェロモン構造が想像以上に柔軟に変化しうることが明らかになった。

 一つの種から新しい種が誕生するのは、進化の上で最も注目すべき問題の一つ。そのため、これまで異性間で種の保存につながる交配という重要なイベントをつかさどるフェロモンは、とりわけ「厳密」な働きと考えられてきたが、発見により変異が集団隔離を促し、新たな種としての進化に導く可能性が分かったという。

 清家特別研究員は「多様性が生まれる仕組みの発見で、例えば昆虫や両生類など、より複雑で、高等な生物のフェロモン構造やシステムの理解にもつながる」と意義を語った。

 【写説】生物のフェロモンに多様性が生まれる仕組みを突き止めた元国立遺伝学研究所員で現理研の清家基礎科学特別研究員