利用権を取得し4月から雑木の伐採などの環境整備を始める遊休農地を案内する八代さん=東伊豆町稲取

 所有者不明の遊休農地を農地中間管理機構(農地バンク)が農業者に貸し付ける全国初の事例が東伊豆町稲取で実現した。全国規模で拡大する耕作放棄地の中で、所有者不明の農地は利活用されずに荒廃が進むケースがほとんど。今回は隣接する農家が借り受けて農地の拡大を図る意向を示しており、先進事例として関係機関の注目を集めている。

 2014年度にスタートした制度で、所有者不在農地を都道府県知事裁定で同機構に利用権を設定し、農業者に貸し付ける。適用第1号となった同町の事例は、花き・かんきつ農家の八代英樹さん(39)が、隣接する耕作放棄地の雑木がハウスへの日照を遮り、有害鳥獣の寝床になっていると町に相談したことがきっかけで手続きが始まった。

 問題の農地は889平方メートル。登記上の所有者は戦後間もなく死亡し、配偶者や子どもも他界し、現時点で所有者不明となっている。同機構は昨年、町農業委員会を通じて所有者の確認調査を実施。その後、同委員会が6カ月間の公告を行ったが所有者は現れず、同機構による裁定申請、県の公告などを経て2月28日付の県知事裁定で同機構に利用権が設定された。

 八代さんは近く、同機構と利用権契約を結び、4月1日から周辺地価などを考慮した賃借料を払って利用を開始する。貸付期間は5年間。その後は5年ごとに同様の手続きを繰り返し利用を継続できる見通しという。

 利用権設定を受けて八代さんは「勝手に雑木を切ることもできず困っていたので安心した。まずは雑木の伐採から始め、いずれは規模拡大に向けてかんきつを植えたい」と話した。町の担当者は「財産権がからむ問題で、全国的には進んでいないようだ。当町の場合は所有者家族が3代死亡していることが分かりスムーズに進んだ」と振り返った。

 農家の高齢化、後継者難で耕作放棄地は年々増加し、その利活用は大きな課題となっている。関係者は「所有者不在農地はわずかだが、稲取が先進例となって少しでも利活用が進むことを期待したい」としている。

 【写説】利用権を取得し4月から雑木の伐採などの環境整備を始める遊休農地を案内する八代さん=東伊豆町稲取