自宅の一角を開放し、秘蔵の資料を展示・公開する森さん=下田市三丁目

 ■「歴史や文化知って」 吉川英治の原稿、色紙も 

 下田市三丁目の森秀樹さん(78)は、自宅玄関脇の一室を開放し、伝説の郷土同人誌「黒船」を主宰した父・森一さん=号・斧水(ふすい)=(1901~61年)をはじめ、ゆかりの文人墨客などの資料を展示・公開した。森さんは「知られざる下田の歴史や文化を多くの人に知ってもらいたい」と、立ち寄る観光客などに丁寧に説明している。

 「黒船」は、24(大正13)年から44(昭和19)年まで20年間、月刊誌として発行された。地元史家・村松春水が「唐人お吉」を発表したほか、吉川英治や島崎藤村など中央の文人も寄稿した。

 一さんは、下田町観光協会長や下田町長を務め、交流は文人にとどまらず、政治・経済界など幅広かった。幕末・下田開港にまつわる資料収集にも情熱を燃やし、その多くは下田開国博物館に展示されている。

 森さんは、日本第1号の薬剤師として知られ、1879(明治12)年、同所に薬局を開業した森斧治郎さんから数え4代目。下岡蓮杖の写真スタジオ、「黒船」を編集した「黒船社」(現在も森さんの自宅を「黒船社」と呼ぶ)も同所にあった。

 玄関脇の一室には、郷土誌「黒船」をはじめ、ゆかり文人の品々、蓮杖やお吉(斎藤きち)の関係資料などが並ぶ。吉川英治の原稿と色紙、西条八十が一さんに宛てた手紙、1925(大正14)年に黒船社に立ち寄った駐日米国大使(エドガー・A・バンクロフト)の写真、お吉の戸籍など貴重な資料も多い。

 森さんは「下田の歴史や文化を知ってもらうともに、観光客の立ち寄り場所の一つとして、旧町内のにぎわいに少しでも役立てばうれしい」と話している。開設時間は午前9時~午後5時。入場無料。

 【写説】自宅の一角を開放し、秘蔵の資料を展示・公開する森さん=下田市三丁目