かこさとしさんの遺作「みずとはなんじゃ?」について語る鈴木さん=下田市加増野

 ■「子どものため 思い貫く」 遺作刊行1カ月半

 今年5月に亡くなった絵本作家・かこさとしさんの遺作「みずとはなんじゃ?」が刊行されてから約1カ月半−。大手インターネット通販の注文ランキングでも上位に入るなど注目を集めている。かこさんの遺志を引き継いで絵を描き、作品を完成させたのは鳥の巣の研究でも知られている下田市加増野の絵本作家・鈴木まもるさん(66)だ。鈴木さんは「これは最後まで『子どもたちのために』という思いを貫いたかこ先生からの贈り物。身近な現象で始まり大きな世界につながるかこ先生ワールドを楽しんでほしい」と話す。

 鈴木さんが絵の担当を依頼されたのは今年3月。数年前に自身の作品を編集者経由でかこさんに贈ったところ、最大級の賛辞の手紙をもらうなど、面識がなくとも十分に認められていたことがきっかけだったという。体調が悪化し目もほぼ見えなくなり、制作活動を続けるのが困難になっていたかこさんからバトンを引き継いだ。

 かこさんの下絵と原稿を元に何度も相談を重ね、手直しを繰り返して4月末ごろにラフ画が完成。タイトルも決まったが、その直後に訃報が入った。鈴木さんは「初めて顔を合わせた時、手を握られて『よろしく頼みますよ』と3回言われたことが忘れられない」と振り返る。

 「水」「土」「火」「空気」の4冊セットのシリーズになる構想をかこさんが温めていたことにも触れて「そっちまでいかずに残念だった」と語った。

 「みずとはなんじゃ?」は、日常生活で当たり前に存在する「水」の大切さを、分かりやすい解説と親しみの湧く絵で教えてくれる作品。食事や入浴など身近な場面で必要とされることから、生物が暮らす地球の環境を維持する上で不可欠な存在であることまでも伝えている。

 かこさんの名著16冊分のキャラクターや挿絵を見つけることができるほか、かこさん本人をモデルにした医者とコックも登場。初めての人も、往年のファンも楽しめる構成となっている。

 かこさとし(加古里子)。1926~2018年(享年92)。福井県出身。民間化学会社研究所に勤務しながら児童文化活動をスタート。人気シリーズ「だるまちゃんとてんぐちゃん」をはじめ600冊以上を描いた。これまでに菊池寛賞や日本化学会特別功労賞など受賞多数。「みずとはなんじゃ?」(小峰書店)は1500円(税別)で全国の書店などで販売中。

 【写説】かこさとしさんの遺作「みずとはなんじゃ?」について語る鈴木さん=下田市加増野