トラックに満載したサクラマスの幼魚をいけすに投入する作業員=網代漁港

 ■魚市場と提携 旅館、飲食店へ流通確保

 定置網漁業や養殖事業を手掛ける熱海市の「網代漁業」(泉沢宏社長)は9日、養殖サクラマス(ヤマメ)の幼魚を海上のいけすに投入する沖出し作業を網代漁港で行った。5年目の今年は熱海魚市場と提携して販路を拡大。地産地消と特産物化に向けた地固めの年となりそうで、関係者は「将来は伊豆・網代のブランド商品にしたい」と鼻息荒く作業に打ち込んだ。

 サケ科で河川にとどまるヤマメに対し、サクラマスは成長の過程で生活の場を海に移して体長30~70センチに成長し、産卵のために川に戻って一生を終える。ピンクの婚姻色が表れることからこの名がついた。国内では北海道から東北の海域に生息し、高級魚として市場で取引されている。

 定置網が主力の同社は安定した収益確保に向けて蓄養、養殖事業にも注力し、夏季のワカシの蓄養が終了する冬季の収益源としてサクラマスの養殖に着手。種苗生産で実績のある函南町の柿島養鱒(ようそん)から幼魚を調達し、水温が17度を下回る1~5月に港の沖約500メートルのいけすで養殖している。

 地元や東京の直営店などでの直販中心に限られた販路も、今年から熱海魚市場と提携。市内一円の旅館や飲食店への流通に道筋をつけ、関係者の士気は一気に高まった。同社の山村豊さん(31)は「低温を好み、技術的に課題のある養殖魚だが、付加価値は高い。地産地消を進め、将来は『網代のサクラマス』で名が通るブランド商品にしたい」と抱負を語った。

 10日までの予定で行われている沖出し作業では直径約20メートル、水深10メートルのいけす2基に体長20~30センチの幼魚4トン、約1万匹を投入し海上に配置する。今後は配合飼料で体重1~2キロに育てて4~5月に出荷する。生産量は10~12トンを見込む。

 作業に立ち会った熱海魚市場の宇田勝社長は「旅館などからすでに引き合いがある。ブランド価値は十分」と太鼓判を押す。柿島養鱒の岩本いづみ社長も「桜前線のように網代で4月に始まる出荷が列島を北上していくように、サクラマスを各地で売り込んでいきたい」と話した。

 【写説】トラックに満載したサクラマスの幼魚をいけすに投入する作業員=熱海市の網代漁港

 【写説】いけすに投入されたサクラマスの幼魚