稽古に打ち込む小夏さん=熱海芸妓見番歌舞練場

 ■「敷居 決して高くない」 熱海・山月小夏さん

 漠然と「芸妓[げいぎ]のお座敷代は高い」とのイメージがある。着物、三味線、太鼓―。芸ともてなしのプロである芸妓が持っている商売道具の価格はいくらか、稽古の費用、時間はどのくらいか。リアルな数字が分かればお座敷の価値が違って見えるかもしれない。熱海花柳界の第一線で活躍する芸妓2人に詳しく聞いた。2回にわたり紹介する。

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 立ち方の小夏さんは芸歴約10年で、熱海芸妓の若手リーダー格。ベテランの立ち方として現役で活躍する母・関美さんが営む置屋「山月」に所属する。熱海花柳界最大の興行「熱海をどり」、週末に開催される「湯めまちをどり華の舞」への出演経験も豊富だ。華のある踊りには定評がある。

 ■20万~100万円超、年間の着物150枚

 季節ごとに違う衣装で出る「華の舞」をはじめ年間約150枚の着物を使いこなしている。1枚約20万円から、高価なものは100万円以上はするという。さらに帯、かんざし、たびも多数所有し、購入や維持、管理にかかる費用は莫大[ばくだい]になる。「高価な着物の多くは母から譲り受けたので、とてもありがたい。ゼロからそろえなくてはいけない人(芸妓)は本当に大変だと思う」と語る。

 ■気さくな一面

 小夏さんの芸や座敷でのもてなしを良く知る熱海市で飲食店を経営する男性(47)は「『芸妓は敷居が高い』印象が強いと思うが、実際は気さくでひょうきんな一面もあり、客を盛り上げてくれる。外見だけでなく、一つ一つの所作や言葉に品があり、内側からにじみ出る美しさに引きつけられる。(2時間で2万円程度の)費用は、決して高いとは思わない」と太鼓判を押す。

 ■道具購入、管理稽古に時間も

 鳴り物も担当する小夏さんは太鼓、鼓、琴なども所有。総額で300万円以上に上る。稽古代は月によって異なるが、平均4~5教室に通い、8~10万円かかるという。

 「着物は武士で言えば鎧[よろい]。着ると身が引き締まる。恥ずかしくない着物をまとい、お客さまの心に添えるような芸妓を目指したい」と目を輝かす。

 (本社・佐々木誠一記者)

 ■用語解説

 座敷…芸妓が宴席に呼ばれること。踊りなどを披露し座を盛り上げる

 花柳界…芸妓などの世界を指す呼称

 立ち方…踊り手

 置屋…芸妓をかかえる家

 鳴り物…鼓や太鼓など囃子[はやし]で使う楽器

 【写説】稽古に打ち込む小夏さん=熱海芸妓見番歌舞練場

 【写説】着物、かんざし、鳴り物など、たくさんの商売道具に囲まれる小夏さん=熱海市内